第一話 ロズエルは天空龍と覇王の夢をみたそう
「ここか……」
「し、失礼しますっ」
「あら、いらっしゃい」
(あ・・・・・・、綺麗な人だな)
「どうしたの? ぼうっとしちゃって」
「ああ、いえ、なんでも!!」
「ふふふ、可愛いのね、あなた。ほら、こっちにいらして?」
「はい! 恐縮です」
「よく顔を見せて……ふふ、食べちゃいたいわ」
「は、はぃ?! わ、私、そういう趣味はないのですが」
「固いこと言わないの、あなたここで働きたいのでしょう?」
「そ、そうですけど……ひゃ!?」
「なら、私の言うことは絶対よね……」
「この、ヘンタイカーリーっっっっ!!!!!!!!」
「なんじゃこりゃーーー!!!!!」
「は、!? 危うく流される寸前だった……」
「あ、あなたは一体?」
「ミルよ。ここの主」
「え、この方がそうなのではないのですか?!」
「あいたたた……」
「こいつはイカーリー。ここのメイド長よ」
「可愛い子がくるとすぐ色目を働かせるんだから」
「それで、あなた、バイトの件で来たのでしょう?」
「は、はい! 今日は面接ということで……」
「ミル様!! 私、この娘の採用に断固賛成です!!」
「あなたはちょっとだまってて」
「ぐすん」
「ばばぁがかわいこぶってんじゃないわよ」
(ミル様には言われたくないですわ……)
「なんか言った……?」
「い、いえ、なんでも、ははは……」
「それで、履歴書、みしてくれる? ここで面接やっちゃうわ」
「はい、どうぞ……」
「フムフムって、ちょ、イカーリーこれ……」
「ミル様、久しぶりの逸材ですわ……」
「あなた、デブメタ邸で働いたことがあるの?」
「ええ、5年ほど続けました」
「よく5年ももったわね……相当家事ができるのね」
「いえそれほどでも。赤ソニア先輩に教えて貰ってばかりで」
「あ、赤ソニア?! 伝説上のメイド長ね、死んだとばかり」
「五ヶ国語を話し、剣術もかなりのもの……」
「誰かにご奉仕するなら、これくらいのこと」
「この能力にこの可愛さ……」
「……あなた、パズドラってご存知?」
「パズ、? なんでしょう、それは」
「イカーリー」
「『パズル&ドラゴンズ』(パズル アンド ドラゴンズ)は、ガンホー・オンライン・エンターテイメントから配信されているiOS・Android・Kindle Fire用ゲームアプリ(パズルRPG)。略称は『パズドラ』。基本プレイ無料でアイテム課金が存在する(F2P)。2012年2月20日にiOS版、同年9月18日にAndroid版がリリースされた。 ジャンルは、RPGとパズルゲームを融合させたパズルRPG。ストーリーやプレイヤーキャラクターなどは持たず、RPG的な要素はモンスターの収集と育成、バトルのみである。プレイヤーは最大6体のモンスターで構成されるパーティを編成しダンジョンへ潜入、パズルドロップを消す事によって敵モンスターを攻撃しダンジョンクリアを目指す。プレイヤーが使用できるモンスターは敵モンスターを倒した際の一定確率によるドロップ[1]、ガチャ、関連グッズや雑誌などの特典などによって入手する事ができる。 」
「以上、Wikipediaより抜粋ですわ」
「それがどうかしたのでしょうか……?」
「これを見て欲しいの」
「こ、これは最新型iphone10!? ごくり……」
「そこじゃない。それにこれくらいまぁ、普通でしょ」
「えへへ、じ、実は……」
「こ、これはiphone5!? 古すぎて一週回ってむしろプレミアがつくわ……」
「機種変するお金がなくて……」
「不憫すぎぃ!!」
「ま、がっつり働いて貰うから都合いいかもね」
「え?」
「さ、これをみなさい」
「これが、パズドラとやらのゲーム画面なんですね……」
「て、ミル様?! それにイカーリーさん、私に赤ソニア先輩?!」
「探せばもっと多くの知り合いがいるはずよ」
「そして、このゲームを生み出した張本人、それが」
「ベルゼブブ山本よ!!!」
「べ、ベルゼブブ!? あの悪名高き悪魔の頭」
「この山本という輩は彼の一族なのでしょうか」
「はっきりいって、よくわからないわ()」
「あなたにやって貰いたいことは、このゲームで、テッペンをとることよ」
「え?」
「使命は二つ。一つはこのゲームで何故われわれが用いられているのかを探ること。そして一つは、今現在、お嬢様はスマホゲーム業界への参入を考えています。あなたにはこのゲームを深く理解してもらうわ、お嬢様の目として耳として」
「あなたは私のメイドとして働いて貰う一方で、このパズドラで一番になって貰うわ。これが雇用の条件。どうかしら、ロズエル」
「メイドとしては勿論自信がありますが、ベルゼブブ山本が織り成すこのパズドラというゲーム、なんだか一筋縄ではいかないようですね。しかし、精一杯やらせて頂きます!!」
「ふふ、いい娘ね。じゃ、採用決定! これからよろしくね、ロズエル」
「はい、お嬢様!!!」
「あらあら、元気一杯ね。じゃあ、後はイカーリー、よろしく」
「いっやほうですわああああ!!!!!」
「え?」
「ごめんなさいね。私はメイドじゃないからあなたの仕事は分からないし、イカーリーはここで一番実力があるメイドなのよ」
「力こそ全て、いい時代になりましたわ……」
「ま、何か困った事があったら遠慮なく言ってね、力になるから。ロズエル、貴方には期待しているわ、パズドラ、頑張ってね。それじゃあ」
「え、ちょ、お嬢様」
「ふふふ、あなたって本当に綺麗な顔しているのねぇ」
「ひぃ! か、顔がこわいですよぅ、イカーリーさん……」
「怯えた顔も、かわいいっ。さあ、メイド服に着替えましょう? 服装を正すはメイドの何よりの務め……」
「え、ちょ、何ですかあの暗がりは、いや、私はまだ、まだぁ!!!!」
「着替えるの手伝ってあげるわぁ。ほら、早くいきましょう?」
「や、やめ、あ、あ、アッーーーーーー!!!!!!」
(……頑張るのよ、ロズエル)